そのとある癖とは・・・、話せばとても長~~~い話しなので、そのつもりでご拝読頂ければ幸いである。
トイ君は、2年半程前、ドッグ・ホームのボランティアさんが保護をしたイヌである。何故保護をしたのか?といえば、簡単な事だった。
ボランティアさんいわく、元の飼い主は当時、小型種のジャック・ラッセル・テリアを、戸外の犬小屋にクサリで繋いで飼育していた・・・だけでなく、小型種なのに何故か『番犬』の役を言い任され、大切にされるでも無く、体罰も受けていた節があった様子であるとの事だった。
老婦人一人の個人商店を営む暮らしだった為、番犬にと考え、他で暮らすその子供である若夫婦が母親の為にジャック・ラッセル・テリアを最適と考え、買い与えたらしい。老婦人が世話のできるサイズとしては最適だったであろうが、そもそもの性質を見当違いした結果が、このトイ君である。
ジャック・ラッセル・テリアを、戸外犬舎で番犬に仕立てた場合には、トイ君の様にどんな子でも攻撃性ばかりが強調されて育つであろう。多分、ミニチュア・シュナウザーでも、同様の飼育方法をされれば、同じ結果を招くであろう。例え、気質は激しい性質であっても、『小型』であるイヌの場合には、生きて行く上でヒトの擁護は必須になる。
ヒトの擁護があり、胸に抱かれ、守られている上で、その激しい気質はコントロールが出来るのであって、守られず、無防備な環境で小さなイヌが、どうやって「良い子」にしていられるというのだろうか。
おまけに飼主から体罰を受けていたのだから、自分を守るものは何も無いも同然であり、自分の身は自分で守らなくては生死に関わるという意識に発展しても、ちっとも大げさでは無い。
そう、トイ君が他の動物に対して噛み付いて行く時、全身をガタガタと震わせている。極度の興奮で震えているのだが、けして「いきり立って」いる興奮では無く、その姿の裏には『恐怖』との闘いが顕著に見られた。
トイ君は、ドッグ・ホームに来てからも、ホームのイヌ達にとにかく噛み付いた。誰かが鳴き声を上げたり、遊びで興奮した声を上げると、その直後にはそのイヌの急所目掛けてトイ君は噛み付いている。誰かが興奮して走ると、トイ君はとっさに噛み付く・・・。
・・・・・・・・・いったいこの子はどうしてこんな事になってしまったのだろうか。
ドッグ・ホームのボランティアさんが保護した時は、イヌに噛み付くだけでなく、ヒトへも容赦なく噛み付くわ噛み付くわ・・・・・の、荒くれ者になりきってしまったイヌだったのである。
ヒトに噛み付く事への矯正は、ボランティアさんが自らも傷だらけになりながら2年半掛けて闘った末に、矯正は完璧という程に出来上がったのだが、どうしてだかイヌや他の動物に対する噛み癖だけが治らないままだった。
とにかく目にすれば、噛み付くのだ。
ボランティアさんの御宅には、疾病を抱えた子達を含め、保護ネコが総勢9匹。保護イヌも5匹居る。そこにトイ君が加わると、途端にスプラッタ劇が繰り広げられてしまう。
どうしても、他の動物の存在を察知すると、途端に目つきを変えて飛び掛るトイ君。必ず相手の急所を一撃で捉える。相手が大きくても、小さくても関係は無く、とにかくトイ君がダッシュした直後には、相手の身体に食らい付きぶら下がっている状態という事だ。
ボランティアさんの御宅は山を背に建っている為、時折イノシシがひょっこり庭先に現れる事も珍しくは無い光景。
だがある時、イノシシを目にした途端、トイ君は自らを省みず、巨大なイノシシ目掛けて飛び掛ったとの事だ。本当に相手がどんなに大きくても、強くても、お構いなしという事だ。
そんな訳で昨年12月から、ちょっと変わった「困った君」としてトイ君をドッグ・ホームで観察する事にしたのだった。
観察に観察を繰り返し、とにかく「噛み付かせない」状況を作り出す事に専念する。
ドッグ・ホームで預かった当初、トイ君は誰彼構わずに噛み付いたものだから、大きなイヌ達からは見事に返り討ちに遭ってしまった。トイ君の顔は、まるでブラック・ジャックの様に、傷だらけになったのである。
大型犬達を相手に、構わず腹部目掛けて噛み付き、離さないものだから、トイ君は必然と顔面を相手に噛み付かれる。その為、左上マブタを裂傷し、顔面を裂傷し、頬を裂傷・・・・・。顔はザクザクに切れていた(縫合手術&治療済みです)。
その様は凄まじいものだが、当のトイ君はそれでもまだ相手に噛み付く事を辞めようとはしない。どんなに自分から血が吹き出ても、皮膚が裂け、肉が裂けても、それでも飛び付き、噛み付く事を辞めないのである。あまりの尋常さに、私も驚きを隠せなかった。
同じ目線で、同じような体格の、アルキメデス(ミニチュア・シュナウザー♂)ですら、トイ君にとっては「決死の闘い」の相手なのである。その為、アルキメデスの皮膚にはトイ君の牙の食い込んだ痕がしばらく絶えなかった。
観察を続けた結果、そんなトイ君の行動には、ある意味一貫性が無く、だがしかしある意味一貫性がある事が判ってくる。
そう、全ては、トイ君が『恐怖心』からそうした行動を取るという見方をすれば、解釈できるのだ。
トイ君は元の飼い主の家で、日々『恐怖』に怯えながら、番犬として外で独り、守られる事もなく、暮らしていた。
その為、リマ君(ホワイト・ミックス♂)の様なグルメ巡り好き&脱走好きのイヌが度々やって来て、自分の食事を盗られたり、自らの生命の危機を感じて暮らしていた可能性は十分に考えられる。
・・・・・トイ君は、茶色っぽい色や濃い目の色の中型サイズのイヌが特に嫌いな様子である。
そして飼主からは理解されずに、体罰を受けていたのだとすれば?
という事は、生命の危機、そして死活問題の日々を繰り返していたとすれば、「やられる前にやらなきゃっ!!!」という行動が身に付いてしまってもおかしくは無いという事である。
そこで、ドッグ・ホームではトイ君がとにかくこれ以上、誰にも噛み付かない様に、先ず口輪の装着を試みる。そして、突撃をした後、トイ君を引き離し、抱き上げて宥める事を繰り返す。
トイ、お願い・・・。
もう、やめようよ・・・。
もう、大丈夫だから・・・。
もう、誰もイジメたりしないから・・・。
トイ、守ってあげるから・・・。
もう、闘っちゃダメ・・・。
もう、いいんだよ・・・。
もう、独りじゃないから・・・。
トイ、みんなが居るから・・・。
もう、一緒だから・・・。
もう、怖くない・・・。
もう、大丈夫だから・・・。
私自身も、正直、ただ時を待ち、信じるだけ・・・そんな状態だった。いつになったらトイ君がそういう事を辞めるのかは判らないままだ。だが今は、とにかくこの子を信じるしかない。そして、自分のしている対処法を信じるしかなかった。
トイ君が恐怖心で興奮をした後は、とにかく必死に抱きしめた。最初は胸の中で暴れ、もがき、手を離れてでもターゲットに噛み付こうとするトイ君だが、力強く、優しく抱きしめ続けていると、その暴れ方もいつしか和らいでくる。
当初は私の胸元でも、腕でも、顔にでも引っ掻き傷を無数に付けて暴れていたが、いつしか興奮の収まりは早まり、今では抱かれる事を安心して受け入れ、抱っこを自ら要求できる程にまでなったのである。
口輪が装着され、ターゲットに噛み付けないトイ君は、攻撃的な行動と態度を軽減する事ができる様になった。トイ君が攻撃的に突撃してきても、口輪によって噛み付けない為、ターゲットとなった相手も、「何やってんの???」と、身構え反撃体制を即座に改める。「なぁ~んだ。」と。
これによってトイ君は、自分が突撃しても相手が反撃してこない=自分が攻撃を受けていない・・・という認識が新たに出来上がった為、トイ君は徐々に、日に日に、誰彼構わず『突撃』するモードを減らしていく。
トイ君自身が突撃特攻隊モードでなくなると、周囲のイヌ達にも落ち着きが戻った。
落ち着いた雰囲気が、トイ君には今、必要である。心の傷付いたイヌにとっては、とても大切な環境だから・・・。
この頃のドッグ・ホームでは、リビングで小型犬だけで過ごさせる時間を設けている。トイ君にとって、小型犬らしい生活、相応しい生活を覚えさせる為である。このメンバーは、プルシャ君(ミニチュア・シュナウザー♂)と、アルキメデス(ミニチュア・シュナウザー♂)、そして園長のアンブロシアさん(ラブラドール・レトリーバー♀)、そしてホームが長いジャック(アメリカン・ピット・ブル・テリア♂)という面々。そこにトイ君を加わらせるのだ。
落ち着いたメスで年長者のリーダーの元で、安心し、守られている状態を作る。この面々であれば、小型犬同士が遊びに熱中をしても、リーダーのお陰で外敵から守られているという状態である為、トイ君が周囲の物音や何かに反応する必要が無くなる・・・という事だ。
また、私というヒトのリーダーも見守っている為、遊びも公平に見守られているという事。先住であるとか、後から来たなんて事は関係ない。年功序列であるイヌ達の社会を尊重した見守り方に徹するのだ。
そんな中で、トイ君が攻撃的な行動を見せようとする度に、キュー・トーイの音を鳴らす。事件が勃発する直前にこれで行動を抑制する事に成功。そして大好きなオモチャを見たら、プライベート・ルーム(自らのバリケンネル)に喜んで飛び込んで行くトイ君。
トリーツ等の食べ物を使っての反応はほとんど期待できないトイ君だったが、キュー・トーイのボールだけは嬉々として遊ぶ事が出来、誘導も容易だった。
だがドッグ・ホームには、キュー・トーイの好きなイヌが他にも居る。ジャックである。ジャックとトイ君が本気のケンカをしてしまったら、トイ君も今度こそただ事では済まない。そして、ジャックに『ピットのスイッチ(闘犬モード)』を呼び覚まさせる訳にはいかない。
その為、トイ君がキュー・トーイを安心して、独占して遊べる環境という形体を作る為に、バリケンネルの中だけで与える事に今はしている。もしトイ君1匹だけの暮らしであれば、オモチャを争奪する争いが起きる事は無いのだが、ドッグ・ホームではそうもいかない為、この様な対処法を取っている。
室内飼育にも慣れ、噛み付くよりもヒトに甘える事を覚え始めたトイ君。
まだ時々、恐怖心を煽る様な物音がすれば、バリケンネルの中でクルクルと左旋回してしまうトイ君。
ドッグ・ホームにイヌのお客さんがある度に、恐怖心を思い出してしまうトイ君。
だが、この2ヶ月程で想像以上の進歩と進化を見せたトイ君。
トイ君を保護したボランティアさん自身も、トイ君の落ち着きぶりに驚きを見せている。何が効を奏したのか?そんな事は明確には判らない。だが、きっと、ちょっとしたキッカケである。
今回初めて、問題行動の治療の一貫とし、このトイ君の治療の為に、ある鎮静剤を併用したのは確かである。だが、これは先ず『安眠』をさせる事が目的であり、かつその『安眠』による精神的な安定を得られたのは確かであろう。
また「この鎮静剤を攻撃行動の抑制目的とし、長期的に継続して服用をさせた場合、パーキンソン症様の症状が出現する事がある」と行動薬理学についての文献には記されている。その為、皆さんは手短にある安定剤や鎮痛剤を使用して、自己判断だけで真似をしないで頂きたい。くれぐれもお願いします。
ドッグ・ホームでは、トイ君に投薬するに当たって、数箇所の動物病院、数名の獣医師の意見を仰ぎ、その上であくまでも『自己判断及び、自己解決』をお約束した上で行った対処法です。必ずしも成功するとは限りませんし、投薬する薬剤を誤れば大変危険です。もしも問題行動でお困りの方がおられるなら、どうか動物病院で相談をするか、トレーナーさんに相談をするなど、専門家の意見を仰いだ上で行うべきですから、市販の薬剤で安易に真似をしないで下さい。
そんな2ヶ月間を経て、今日のトイ君と言えば・・・・・
リビングで私のストーカーをしております(笑)。何処に行くのも、何をするのもついて来る、愛らしい小型犬そのもの。口輪を必要とせず、他のイヌ達の中で安心して寝起きしています。リビングでのお気に入りの場所は、テーブルの下にあるカゴのベッド。今はそこでスヤスヤ寝ています。
先日、アメリカン・コッカーの入園で、私はトイ君がまたしても新たなイヌの出現に、目の色を変え、またしても噛み付いてしまうのか・・・と懸念しておりましたが、トイ君がコッカー君を噛み付いたのは、たった1度だけ。それも、叱れない理由からでした。
先のブログにもある様に、先日の入園当初、興奮していたコッカー君は私に噛み付いたのですが、どうやらそれをイヌ達は気付いていたらしく、次にコッカー君が私に反抗的な素振りを見せた途端、トイ君は自分よりも少し身体の大きなコッカー君にガップリと噛み付いていたのです。
トイ君は、どうやら私を助けてくれたのでした(驚)!そして、トイ君の攻撃的だった行動は、正しい威嚇へと変化を見せていたのです。
そう、コッカー君の身体には、噛まれた痕は一つも残っておらず、トイ君が上手に噛んだ事は間違いありません。そして、今までなら何をしても止まらなかったトイ君の攻撃行動が、コッカー君に噛み付き、そして自らそれを辞めたのでした。今までなら、攻撃的な行動をした後は、しばらく興奮が収まらず、誰にでも噛み付きそうな勢いでウロウロしていたトイ君が、コッカー君に噛み付き、自ら離れ、そして自ら平常心を取り戻していたのです。
投薬が良かったのか?何が良かったのか?今となってはその答えを知る事は難しいのですが、トイ君に変化が起きたのは確かでしょう。
トイ君は、1匹で飼育され、室内飼育の環境で、何時も愛され、可愛がられ、大切に扱われれば、とても良い子にしている事のできる子です。元々戸外飼育だった為、トイレはペット・シーツを好みませんが、愛されるなら何でも吸収しようとする意識をしっかり持っている子です。
多頭飼育であっても、平等に愛され、平等に大切にされれば、共存する事も十分に可能な子です。ただし、先住犬の性格や性質が良い事。また、躾けもしっかり出来ている事は必須です。それは『困難な多頭飼育』を避ける為に意味します。プロの方であればそれも可能である子だと言えます。当然ですが、多頭飼育を検討される場合には、先住犬の子との相性を見た上で検討する事をお勧め致します。先住犬との接触に当たっては、トイ君に口輪を装着した上で行います。
トイ君は、クレート・トレーニングもほぼ完成しています。キュー・トーイをオシャブリ代わりにしていれば、ご機嫌でネンネできるワンコです。
今のトイ君に、厳しい躾けや、厳しい叱り方は、完璧に不要となりました。優しく、誘導する方法で育てて頂ければ、十分に『愛犬』としての素質を取り戻した子です。
そんなトイ君ですが、里親をご検討頂けます方は、どうか宜しくお願い致します。その他にご不明な点がございましたら、この記事にコメントを入れる形で残して頂くか、個人的な内容が含まれます場合にはメールでお問い合わせ頂ければ幸いです。
トイ君の画像を追加しました。画像はこちらからご覧下さい♪




