そういう人間側の身勝手な気持ちだけで、私はチワワ君に洋服を着せたいのでは無い。メキシコ原産のイヌであるチワワは、当然、寒がりである為、暖を取れる衣類が必要だから買うのである。だが、そういった必要に迫られて着せるからには、わざわざ不似合いなモノは選ばず、もちろん似合いそうでかつ、機能的とか、質実剛健なモノを選ぶのが私だ(笑)。
選んだ洋服を片手にレジへ行こうとすると、親子連れや、孫を連れた祖母など、様々なヒトから言葉を浴びせられる。いや、相手は声を掛けたつもりなのだろうが、申し訳ないが私には「浴びせられた」様にしか感じられなかったのである。
「あっ!!!チワワだぁ~~~~~!!!!♪♪♪」
まるで、ちょっと「うちの子に」OR「うちの孫に」見せてよ!と言わんばかりのデカイ声で。
イヌは、オモチャでは無い。
見世物でも無い。
私は迷惑だ。
見せる位良いではありませんか?大人気ない・・・。貴方はそう思われるかもしれないが、チワワ・ブームの昨今では、もしかしたらこうしてチワワを連れ歩くだけで、この様な好奇な言葉を掛けられるのだろう。
きっと、「あっ!シベリアン・ハスキーだ!!!」とか、
「あっ、ゴールデン・レトリーバーだ!!!」と、以前ドコででも耳にした様に。
・・・・・・多分私は、保護したばかりで、寒さで凍えているチワワ君が気になっていて、「はやくこのコートを着せてやらなくちゃ!!!」と気が逸っており、周囲への配慮が物凄く掛けていたのだが、正直、人気犬種を目にしただけで、いちいち好奇心だけで犬種名を声にするヒトと会話をしても、無性に腹立たしい気持ちになりそうな、ついうっかり説教や小言を言ってしまいそうな、しまいにペット・ショップで営業妨害まがいの言動を発してしまいそうでもあるので(爆)、無表情で彼らをやり過ごすのが精一杯の対応となってしまったのだった(苦笑)。
会計を済ませ、早々に車内に戻り、チワワ君にコートを着せ、ゆたぽんの入ったトート・バックに戻し、そっと毛布を掛けた。
動物病院で採尿の為の注射器を受け取り、近隣を散歩していると、通り掛るヒトや、通り掛る車に乗っているヒト達から、先の声がこだましてくる様な表情で見られている様に感じて仕方なかった。
『人気犬種』というレッテルを貼られたイヌ達の繁殖犬は、どんな扱いを受けているのか、彼らは考えた事があるのだろうか?父犬はチャンピオン犬であろうが、ノンタイトル犬と呼ばれる、何の賞も受賞していない普通の血統の父犬でも、JKC(ジャパンケン・ケンネル・クラブ)では、DNA登録を義務付けている。
母犬となる犬はチャンピオン犬であった場合のみにDNA登録が義務付けられており、ノンタイトル犬であった場合には登録が義務付けられていないという現状は、まだ血統証なんていう書類が必ずしも信頼できる内容であるとは限らない・・・という実情を知っているのだろうか(注:JKCに問題があるという意味では無く、登録を申請する側の繁殖者の偽称行為によってそういった偽造が可能になるという意味合いである)。
そう、まだ繁殖者の心一つで、いわゆる偽装行為が可能であるという事であり、JKCが必ずしもそれらの事柄を完全に把握できないという事である。
来年、人気犬種になると予測されている犬種は、ミニチュア・シュナウザーであると世間では言われている。私は今から身震いしている話題だ。ついこの間までは「何という犬種ですか?」と聞かれていたと思ったが、来年以降は、ルナちんや、アルキメデスを連れて歩いているだけで、
「あっ!ミニチュア・シュナウザーだっ!!!見せて!!!触らせて!!!」
と、1歩も先に歩めないほどに声を掛けられるのだろうか???この事を既に懸念していた私としては、実際に現在人気犬種のチワワを保護し、そして実情を観察した上で、彼らを非常に気の毒に思っている。
チワワ君は撫でようとすると、どんなにそっと手を近づけても、首をすくめ、身体を固くさせてしまうのだ。いったい今までどんな生活をしてきたのだろうか?唸ったり、噛み付こうとはしないけれど、頬や首、喉元を撫でようとすると、途端に首をすくめるのである。
ドッグ・ホームで大型犬達に誤って踏まれては大怪我をするからと、簡易サークルに入れられていても、そのサークルから「出たい!」とか「出して!」というアピールを全くしようとはしないチワワ君。いったい今までどんな暮らしをしてきたのだろうか?
まさかとは思いたいが、『人気犬種』だからと言って、小さいから小さいスペースだけでなんとかなるという安易な気持ちで、このチワワ君を飼った(買った)のではないよね?そう思いたくないけれど、腑に落ちない点が多々見受けられたチワワ君。
尿検査の為の採尿をしようと、チワワ君を広い駐車場で、フレキシブル・リードを使用し、自由に歩かせるが、さっぱりトイレをしようとしない。駐車場の輪留めに残っている、よそのワンコのオシッコのニオイを、上から下まで丁寧にニオイを嗅いではいるが、当のチワワ君は一滴のオシッコも出さないのだ。
駐車場だけでは刺激が少ないかと思い、車通りの少ない道を散歩するが、あちこちのニオイを嗅いでも、オシッコどころか、ウンチも出ないチワワ君。先ほどコートを買って着せたとは言え、チワワ君にこの寒さは堪えるハズだ。いくらなんでもオシッコ位出るはずだが、さっぱり排尿する気配は無かった。
チワワ君の尿検査を諦め、病院の駐車場へ戻る間際に、チワワ君はやっと大量のオシッコを排泄したのである。何故か、くっきりとした白線の上を選んで・・・。もしや、散歩をした事が無いのだろうか?外で排泄・排尿をした事が無いのだろうか?だからペットシーツに少しでも似ていると思った白線に辿り着いて、やっと我慢していたオシッコをしたのだろうか???
腑に落ちないまま、病院の診察室で大はしゃぎするグレン君をヘッドロックしつつ、チワワ君を丁寧に診察して頂く。
体重は、1,45kg。いくらチワワとはいえど、軽すぎる。だが、骨盤が見て取れる程に痩せて脂肪が無い為に、判らなくはない。
問題のありそうな歯肉や、歯だが、歯肉が痛んでいる事が判る。歯の方は手術により抜かなくてはならない可能性が高い。乳歯が残っている部分があるからだ。
睾丸は、いわゆる「片睾丸」である。左側の睾丸が降りていない様子。
そして若干びっこの様な、何かかばって歩く風の歩き方や、四肢を伸ばしたり縮めたりする度に節々がパキプキという軽い音を立てていたものは、膝関節・股関節などの形成不全を疑って良さそうであるという診断。
永久歯が残っている事も、片睾丸の事も、関節の事も、遺伝的な問題である。こういう問題は『人気犬種』というレッテルを貼られた犬種たちが、乱繁殖をされる事によってより高い確率で生じてくる問題だ。100%そうだとは断言しないが、多大に関連していると思って頂きたい。
またこんなに小さな身体のイヌを、乱繁殖した場合、母犬は他の犬種に比べて、けして長生きなど出来ないはずである。出産する事自体が悪い訳では無い。『乱繁殖』に問題があるのだ。そして、その『乱繁殖』をした生体を売買するヒトに問題があるのだ。
けして、彼らチワワ達には、何の罪も無い。
彼らの望みは、大切に擁護され、愛され、生きる事だけである。
先生と二人で、溜息ばかりつきながら、チワワ君を診察した。幸い、チワワ君はフィラリア症では無かったが、血液検査の結果から、総コレステロールの数値がかなり高い事が判明し、その他の数値と照らし合わせると、栄養失調というよりも、『遺伝性の疾患』の一つでもある若年齢の「甲状腺機能低下症」の疑いがある事が見受けられる。
チワワ君を託された里親さんが、これらの疾患を考慮した飼育を存続しなくてはならないとなると、かなり費用も手間も、労力もかなり要求される事になるだろう。そんな里親さんが、早々見つかるとは思えない。
目の前に居るチワワ君の年齢は、もしかしたら1歳未満かもしれない。1歳位の若さで、幼いという事、『人気犬種』である事から、里親希望の話は多いかもしれないが、『人気犬種』だからと希望するヒトの中に、どれほど『遺伝性の疾患』と向き合って、治療を惜しまず看病・管理のできる方が見つかるのだろうか・・・。
そう思うと、やるせない気持ちになってくる。
人間の金儲けという身勝手さによって繁殖をされ、『人気犬種』を所有するという虚栄心を満たす為に売られる彼らチワワの中で、どれだけの数のチワワ達が『真の幸福』を手にし、安泰な暮らしを送っているのだろうか?乱繁殖によって必然と『遺伝性疾患』を持って生まれたチワワ達の中で、どれほどの数のチワワが飼い主に理解され正しい管理と治療を受けさせて貰えているのだろうか?
そんな思いを巡らせながら、帰路、バックに入ったままで、アルキメデス君と頭を折り重ね、安心してスヤスヤ眠るチワワ君を撫でた。
帰宅し、簡易サークルにチワワ君を入れると、即座にチワワ君は大量のウンチを排泄する。やはり、オシッコは身体が冷えて我慢の限界に来た為、ペットシーツに似て見えた白線の上でしたけれど、ウンチは我慢をしてしまったのであろう。
ずっとトート・バックに大人しく入っていて、暴れたりせず、トイレを我慢していたチワワ君。
エライぞ!
ガンバレ!
そして、
きっと、
必ず、
幸せになろうねっ!!!




